福来ル食住礼讃 其ノ一「下田流」

今回から、「福来ル食住礼讃シリーズ」を掲載してゆきます。多くの町で食や住まいに関する職人さんや人たちが、高い意識と技術で「美味しい食事」「心地よい住まい」を目指して日々研鑽してらっしゃいます。そのことに感謝しつつ作る側、使う側の両方に「福を呼ぶ景色(いろあい)」を訪ねてご紹介したいと考えています、その記念すべき第一弾は、東京・板橋の高島平に在るベーカリーショップの「下田流」さんを訪ねます。

お店は、大通りに面した風通しの良いロケーションにお店があります。車で立ち寄ろうとすれば、うっかり見過ごしてしまいそうな、馴染み感です。悪く言えば、今時のベーカリーショップではない。良く言えば、だからこそ「下田流」という世界観があるのだと感心します。さて、肝心のパンたちは?といえば・・・店構えや内装の地味さなど、どうでも良いというコントラストが明確なほど、素晴らしいパンたちが鎮座しております。この日、私は14:00ごろお邪魔しましたが、上記の「半生ドーナツ」が写真のごとく、あ〜美味しそう^^という絵面で迎えてくれます。そして、実際に食してみれば、溶けて無くなるほどで、見た目のボリューム感と裏腹に「秒で」なくなります。とても1個では足りませんでした^^この日は、半生ドーナツのほかに「下田流クロワッサン」「クロワッサン・イズニー」の計3種類を購入しました。下田流クロワッサンは、ややビター感ある大人クロワッサンであり、クロワッサン・イズニーは、優しい小麦ベイクの味が広がるクロワッサンです。いずれも「下田流」が体験できる逸品です。

さて、この半生ドーナツのように美味しい!もしくは、美味しそうに感じる「いろあい(グラデーション)」とは、どのようなものなのでしょうか?簡単な色分解で凡そのカラースキームを作成すると上図のようになります。この場合のポイントは「白い包み紙」で、半生ドーナツのいかにも香ばしいそうな「BAKE COLOR」が反照(色写り)している点です。この「色写り」こそが、全体に豊かな階調性(グラデーション)をもたらす効果を成しているのです。人間の目というのは、常に違う色を見て補正しています。そして、この「白い包み紙」に加えて、半生ドーナツに馴染みきった表面の砂糖が「BAKE COLOR」に馴染み、パン自身と「白い包み紙」をつなぐ「アソートカラー(従属色)」を担っています。故に「BAKE COLOR」に寄せた「オフホワイト系の壁面」はベーカリーショップでは相性の良い「ベースカラー(基調色)」になり得るのです。

高島平の北側は、都営三田線沿線と荒川の河川敷に挟まれた地域です。この地域には、かつて、私が中学校2年生まで過ごした思い出の地であり、当時は物流倉庫が立ち並ぶだけに殺風景な場所だったんです。しかし時代と共に随分と街らしくなって、ついには、下田流さんのような、素晴らしいベーカリーまで現れて、とても感謝している次第であり、今回、「福来ル食住礼讃」シリーズ其ノ一とした理由でもあります。お店を出た後、半生ドーナツを我慢できず、口に頬張りながら思い出の景色を眺めて帰路につきました。

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